なぜデンマーク人は「同じ店」に通うのか?食事で深める人間関係と信頼のつくり方
2026.01.21 Wedこれまで世界中のさまざまな国の方々とお仕事をしてきましたが、一番長く、そして深いお付き合いが続いているのは、やはりデンマークの企業です。
デンマークの人々には「Hygge(ヒュッゲ)」という文化が根付いています。それは単に心地よい空間を作るだけでなく、人と人との親密な時間の共有を何よりも大切にする精神でもあります。
今はリタイアされていますが、私が長年懇意にしている寝具メーカーの元社長・レナート氏、そして彼が「この人こそは」と20年前に引き抜き、現在は代表を務めるクリスチャン。彼らと過ごす時間は、まさにそのヒュッゲな哲学を肌で感じる瞬間です。
彼らと中国やドイツなどへ出張に出かけた時のこと。食へのこだわりが強い彼らは、まず滞在先の近くで美味しそうなレストランを探し出します。そして一度「ここだ」と気に入ると、浮気することなく、毎晩必ずそのレストランへ通うのです。
私たち日本人の感覚からすると、「せっかく遠くに来たのだから、あのお店もこのお店も試してみたい」と思ってしまいがちですよね。けれど、彼らの流儀は違います。

毎晩同じテーブルにつき、同じスタッフと顔を合わせる。そうするうちに、初日は「客と店員」だった関係が、日を追うごとに「馴染みの客」へと変わっていきます。お店のマネージャーとも仲良くなり、あうんの呼吸が生まれ、サービスがどんどん良くなっていく。これが彼らの大切にする、関係性の深め方なのです。
今回のフランクフルト滞在でも、そうでした。 もう5年目、回数にして15〜16回は訪れている馴染みのイタリアンレストラン。確かに食事は美味しく、価格も手頃ですが、私たち8人から12人のグループが毎晩訪れることは、お店にとっても嬉しいことに違いありません。

前菜から始まり、メインディッシュ、そしてワインと会話を楽しみ……ここまでは素晴らしい時間です。 ただ、一つだけ、私が密かに頭を抱えてしまうことがありました。
それは、日を追うごとに豪華になっていく「サービスのデザート」です。

「いつも来てくれるあなたたちへ」と、大皿に山盛りにされたケーキ、アイスクリーム、ムース、そしてフルーツ。 それはもう、感謝の気持ちが物理的な量となって表れたかのような迫力です。 4人分として出されたそのプレートは、どう見ても私たちのお腹の許容量を超えています。
お店の方の温かいおもてなしの心は、本当に嬉しいのです。 けれど、やはり日本人としての「もったいない」という精神が顔を出してしまいます。食べきれずに残してお店を後にすることに、どうしても罪の意識を感じずにはいられませんでした。
同じ場所で時間を重ね、関係を築くことの豊かさ。 そして、その結果として受け取る愛情の深さと、ほんの少しのジレンマ。
文化の違いが生むこうした小さな心の揺れもまた、旅と仕事の味わい深い一部なのかもしれませんね。
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