会話しているとメモを渡してくる母の話
2019.09.21 Sat私の父はすでに他界しました。
84歳の母は妹夫婦と生活していますが、最近妹から、
「母がわがままばかり言う」
という愚痴を聞かされていました。
不思議なもので「両親はいつまでも変わらない」と子供達は勘違いします。
私も父が78歳になるころ、駅の近くで杖をつきながら歩いている父にばったり会い
「おはよう、お父さん。どうしたの?杖なんかついて?」
と声をかけたことがります。父は、
「ちょっと足が痛いんだ」
と言って、ゆっくりと歩いていました。
その時、ふと
『父はもう少しで80歳なんだ』
と気づきました。
母は84歳の今でも自転車に乗り、近くのデパートやスーパーに出かけ、妹家族の夕食を作っています。
母は昔から体調が悪いことを、私たち3姉妹は
『ああ、また言ってる』
くらいにしか母の小言を聞いていませんでした。
ところが、先日のこと。
たくさんの人が我が家に来た際、母も連れてきて、少しでも楽しい時間を過ごしてもらおうとしました。
数人で会話していると、母はメモ帳を取り出して、一生懸命に色々と書き留めています。
最初はなぜ母がメモ帳に色々と書き留めるのか、わかりませんでした。
母の様子をよく見ていると、一生懸命にそのメモを見て、状況を理解しようとしているのだと気づきました。
さらに、母の耳が遠いことにも気づきました。
母はどれが自分に向けられた会話かわからず、メモを書いているのです。
途中でもう何が何だかわからなくなったのか、
「芳子、この人は誰?なんて言っているのか、書いて」
と言いました。
私はメモに色々と書き込み、母に渡すと、母は一生懸命にそのメモを見ています。
そしてまた次の人が何か話し始めると、
「芳子、このメモ帳に書いて」
と言って渡されます。
近くで生活し、コントロールされた環境で生活していると、こうした変化は見逃してしまうのかもしれません。
いつも決断をしてくれた父とがいなくなり、自分が歳をとり、耳も遠くなり、人の言っていることがよくわからない。
そういう状況の中で、一生懸命にメモを取る母のことを思い、ふとかわいそうになりました。
きっと不安が多く、体調もあまり良くないのだろうと思い、妹にも私たちの気づきを伝えました。
日々一緒にいると、イライラすることが多くなるのは理解できます。
でも『老い』というのは、誰にでもやってきます。
少しでも思いやりを持って日々生活ができたらと改めて思いました。
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