慈悲の時間=Mercy Period。父と過ごした最後の穏やかな日々

2025.07.26 Sat

あなたは「奇跡のように病気が落ち着いた時間」を体験したことがありますか?
私はそれを、父の肺がん闘病のなかで経験しました。

父は80歳の時、肺がんを発症しました。抗がん剤治療で一度は回復し、秋の晴れた日曜、好きな洋食屋で牡蠣グラタンを食べ、その後わが家に立ち寄ってブランコに揺れながらニコニコしていた姿を今でも鮮明に覚えています。
――その平穏な日々が「ずっと続けばいい」と願いながら、心のどこかで「長くは続かないのでは」という不安も感じていました。

結果的に、その後2か月で病気は再発。坂道を転げ落ちるように容体は悪化しました。後から思うと、あの穏やかな時間こそがMercy Period(慈悲の時間)だったのだと気づいたのです。

Mercy Periodとは、重い病を抱える人に訪れる一時的な回復期のこと。
昏睡状態の人が亡くなる前に一瞬意識を取り戻したり、結婚式を挙げたい花嫁が一時的に元気になって式を迎えられたり――そんな奇跡のような時間があるといわれます。長い場合は半年から1年続くこともあり、本人や家族が「もう大丈夫」と勘違いすることも少なくありません。

実際、私の知人も難病から回復し、半年間ふつうの生活を送ったのちに再発しました。経理や人事、保険の準備ができていないまま再入院となり、その報せを聞いたとき私は言葉を失いました。

このMercy Periodは数時間かもしれないし、数年かもしれません。
だからこそ、回復期にこそ「今、この時間をどう過ごすか?」を考え、備えることが大切なのだと思います。

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