極寒の冬に遭った恐ろしい経験

2023.01.28 Sat

10年に一度の寒波だということ。
気温がマイナス5度とかと言われると、ジェトロの輸入専門家として北米に派遣された時のことを思い出します。
(もともとバンクーバーに住んでいましたが、バンクーバーはメキシコ暖流が上がってきますから、日本人が想像するほど寒くありません)

実は、そこで寒さによる恐ろしい経験をしました。

北米への派遣はワシントン州のシアトルからスタートし、オレゴン州のポートランド。さらに南下し、カリフォルニア州のサンフランシスコ、ロスアンジェルスなどを周り、内陸のワイオミング州、コロラド州、そしてイリノイ州のシカゴ、アメリカで一番寒いと言われるミネソタ州のミニアポリスを経て、カナダを回る旅でした。

この年はアメリカが寒波に襲われていて、シカゴについた時点でマイナス20度でした。
空港の建物から出た瞬間、呼吸するのが辛く痛い感覚を覚えました。
タクシーを待つ間にまつ毛が凍り、とんでもないところに来てしまったと思ったのを思い出します。
ジェトロの事務所の方々と外を歩くとき、あまりに雪が多いと声が普段のように反響せず、雪の中に吸い取られていくような感覚があり、初めての経験に驚きました。

宿泊先はSwiss Hotelで、ミシガン川が目の下に見えます。
休日の午後、橋の向こうのダウンタウンの北側に行ってみたくなり、完全装備で厚手のダウンコートにニット帽、そして厚手の手袋にブーツという姿でホテルのロビーから出ようとした時に、ドアマンに止められました。

「どこに行くんですか?」
「橋を渡って、ちょっと北側を見てみたくて」
「まさか歩いて橋を渡るつもりじゃないですよね? 川は風が強くて、体感温度はマイナス30度以下です。渡り終える前に死んでしまうと困るから、タクシーで行って下さい」

当時日本では、短距離乗車に対するタクシーの乗車拒否などが話題になっていたので、
『こんな短距離をタクシーが乗せてくれるのかしら?』
と心配しましたが、全く問題なく橋の向こうまで送ってもらえました。

アメリカで一番寒いのはシカゴじゃなくてミニアポリスだと聞いて、そのミニアポリスに移動した時にはかなり極寒に慣れていたのを覚えています。
その後カナダに移動し、オンタリオ州のトロントについたときはマイナス4度。
それが『暖かい』と感じたのには自分でも驚きました。
調子に乗ってホテルの温水プールで泳ぎ、そのまま外のプールに出た時には、ホテルの窓から、何人かの人が
「泳いでいる人がいる!」
と私を見下ろしていました。

ところが…
帰国後、毎朝目が覚めると両腕が伸ばせなくなっていました。
伸ばそうとすると痛みが走ります。
お風呂に入って体を温めると、段々と両腕を伸ばして手を開くことができるのですが、とにかく目が覚めた時は最悪の状態でした。

医者に行くと、先生に
「どこか寒いところに行きましたか?」
と聞かれました。

急に慣れない人が極寒の場所に行くと、その弊害が出るそうで、血管が縮むというのです。
この症状は段々と緩和されるということで、毎朝お風呂に入って腕を伸ばすというのを三週間ほど継続して、やっと元通りになりました。

何事も無理は禁物です。
皆さんも寒さには御用心ください。

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