友達との、30年越しの約束を果たした時の話

2016.01.11 Mon

18歳の時のアルバイトがきっかけで、私は昭子さんという1歳年上の女性と親しくなりました。
ある日二人で夕立が上がるのを水道橋の駅で待っている時に、とてもすてきな旅行会社のポスターを目にして、
「ねえ、60歳になったら、二人であの白い船に乗って、エーゲ海クルーズに行こうよ!」と約束をしたのです。
 
ブルーの海、白い船、エーゲ海というロマンチックな名前の響きに20歳前の私たちは憧れました。
そして今まさに人生の船出をしようとしていた私たちにとって、将来は大きな希望と可能性を約束していました。
 
私はカナダに渡り、国際結婚をし、彼女は税理士になりました。
しかし、帰国後起業家としての厳しい人生を選択した私。
引きこもりになってしまった旦那様を抱え、3人の子供を育てなくてはならなかった彼女。
 
年に1、2回づつ会いながら、交友を深め、悩みを打ち明け合ってきました。
そんな彼女と年末に一緒に食事をした時のことです。
「ねえ、芳子ちゃん。あの約束覚えてる?エーゲ海クルーズの。」と彼女。
「もちろん覚えているよ。60歳になって、お金持ちになって、二人で優雅に豪華客船でしょう?」と私。
 
エーゲ海クルーズ
 
「私さ、それまで生きていられないような恐怖感があるの。祖父も母も、二人とも膵臓癌で52歳で亡くなっているでしょう?
仕事をしない旦那はアル中だし、3人の息子も大学までやったのにフリーターにしかなれない。これだけで終わっちゃったら、あまりに私がかわいそうだから、私のために豪華な旅行をしたいの。どこか連れてってくれないかな?」
 
ということで、彼女といっしょに時差がなく、短い期間を思い切り楽しめるオーストラリアに旅行することにしました。
ほぼ1日おきにスパでマッサージを受け、グレイトバリアリーフにも出かけ、美味しい食事を堪能しました。
でもそんな彼女、カメラもスマホも持っていません。
 
「いいの。今回のこの豪華な旅のことはすべて記憶に残しておくから。」といいつつ、いままで本当に慎ましやかに暮らしていた彼女が気持ち良いほどお金を使い、贅沢をしたのです。
 
幸いにも彼女は渋谷の税理士法人で今も元気に仕事をしていますが、人間の人生なんて一寸先は闇。
彼女のように、不安を覚えたら、即自分のやりたいことを思い切りやれる気っ風の良さ。
素敵だと思いました。

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